2020年11月18日
日本ケアテック協会が設立

Column
コラム

介護IoTセンサー技術を用いた高齢者見守りシステムの魅力とは

業務効率化やサービス品質の向上が期待できる“見守りシステム”を導入する介護事業者が増えてきました。見守りシステム(介護IoT)を導入すると、業務負担を減らせ離職率を防ぐ効果も期待できます。この記事では、見守りシステムのメリット・デメリットについてご紹介します。

はじめに

介護IoTセンサー技術を用いた”高齢者見守りシステム”が相次いで登場しています。

昨今の少子高齢化の進展とともに、介護度の重い方や見守りの必要な高齢者が増加し、介護負担も増大の一途を辿っています。
そのため、要介護者の安全性の確保や介護職員の負担軽減を目的として、見守りシステムを導入する介護事業者が増えてきているのです。

また、経済産業省と厚生労働省の「日本再興戦略2016」でも、普及促進を図る技術として見守りシステムが盛り込まれています。そのため、見守りシステムの市場規模は、2025年に227億円まで拡大すると予測されているのです。

さまざまな介護事業者が導入を始めている見守りシステムとは、どのようなシステムなのでしょうか?本稿では、高齢者見守りシステムについて分かりやすく解説します。

高齢者見守りシステムとは

介護IoT技術を活用して、センサーで収集したデータを高度に処理し、要介護者(入居者)の状況を自動認識できるシステムのことをいいます。

従来の各種見守り機器では、アラーム後に入居者の様子を見に行くため、緊急時に対応が間に合わないこともあり、何が起きたのか状況を把握することが難しかったです。また、複数のアラームが鳴った場合には、優先順位が分からないなどの問題点もありました。

見守りシステムを導入すれば、センサーで収集したデータを活かして、サービスの品質を落とさずに効率的な介護が行えます。例えば、遠隔で入居者の状況を確認できるため、病室を往復する必要がありません。ムダを省いて、時間を有効活用することができるため、その分手厚い介護サービスが提供できるようになります。
また、入居者が自発的に助けを求める際に得られる情報に依存せずに済み、さまざまなデータを活かすことで、介護サービスの品質を向上させられます。

補足:経済産業省と厚生労働省が普及を促す

介護事業所で導入が進んでいる高齢者見守りシステムは、経済産業省と厚生労働省の「日本再興戦略2016」においても、重点的に開発する分野として位置付けられています。
マーケット調査会社SEED PLANNINGの調査結果によると、高齢者見守りシステムの市場規模は2025年に227億円まで拡大すると予測されています。そのため、介護事業者は介護職員の業務負担を軽減するために、見守りシステムを導入していかなければいけません。

高齢者見守りシステムのセンシングの種類

高齢者見守りシステムは、どのような情報を検知できるのでしょうか?ここでは、見守りシステムのセンシングの種類をご紹介します。

動体センシング

動体センシングには(1)人感センサー(2) 荷重/圧力センサー(3) 画像センサーがあります。

(1)人感センサー

人感センサーは、赤外線や超音波で要介護者(入居者)の動きを検知します。画像や動画のデータを収集することはできませんが、対象者の視野に入りにくく、プライバシーを守れるので使用用途は広いです。また、人感センサーは、断線などの故障リスクも少ないです。

(2)荷重/圧力センサー

荷重/圧力センサーは、要介護者(入居者)の体重を検知します。ベッドから立ち上がろうとした場合や転落などで、センサーが検知すると通知されます。そのため、転倒する恐れのある入居者も安心して見守ることができます。また、ナースコールと連動して通知するものもあります。

(3)画像センサー

画像センサーは、要介護者(入居者)の動きをカメラで検知して、起き上がりや離床を通知してくれます。また、画像や動画のデータを蓄積することができるため、入居者が自発的に助けを求める行動から得る情報だけに依存せず、トラブルの原因などを突き止めることができます。

バイタルセンシング

バイタルセンシングは、要介護者(入居者)の脈拍や心拍数・呼吸・血圧・体温を検知します。ベッドマットの下にセンサーを設置し、上から圧力をかけたり、振動を検知したりすることで測定ができるのです。また、カメラを備えて、赤外線で体温などの情報を収集する機器やバイタルデータで睡眠状態を可視化できる機器もあります。
入居者のバイタルサインに異常が出た場合に通知が届くため、素早い対応が行えるようになり大変便利です。生体信号をリアルタイムに検知するため、介護サービスの品質向上が狙えます。

環境センシング

環境センシングは、温度・湿度・照度・気圧などを各種センサーで計測し、入居者の居住環境を把握することができます。また、快適な室内環境を設定しておき、温度・湿度に関して異常が出た場合に通知するものがあります。

介護IoT高齢者見守りシステムができること

介護IoTセンサー技術を活用した高齢者見守りシステムを導入すれば、介護業務を効率化することができます。

入居者の状況が分かる

感知するセンサーによって、入居者の状況を確認することができます。入居者の離床が通知化されるだけでなく、脈拍や心拍数・呼吸・血圧・体温を自動採取できるセンシングが登場してきました。

対応状況の共有ができる

介護IoTの見守りシステムを導入すれば、場所を選ばずに、入居者の呼び出しや通知アラートに応えることができます。また、ビデオ通話も行えるものもあるので、入居者がどのような状態なのかを一目で確認できます。また、見守りシステム上には、誰が対応したかも表示されるため、対応状況の共有も可能です。

居室環境を把握できる

IoTセンサー技術を活用すれば、居室の温度・湿度・照度も感知できるため、居室の状況も遠隔で把握できます。入居者が快適に過ごせる室内環境か、就寝したかどうかを居室の状況把握することができます。

映像で状況を確認できる

従来の見守り機器は、写真・映像のデータが得られないため、問題の原因を突き止めることができませんでした。しかし、見守りシステムを導入すれば、写真・映像で状況を確認することができます。
プライバシー配慮が気になる方向けに、入居者から呼び出しがあった場合のみに表示させるものやシルエット表示など、プライバシーに配慮した映像機器も登場しています。

高齢者見守りシステムのメリット

高齢者見守りシステムを導入する介護事業者は増えていますが、どのような効果が得られるのでしょうか?ここでは、見守りシステムのメリットをご紹介します。

介護サービスの品質が向上できる

人材不足で介護職員の負担が増えて介護の質が低下すると、介護施設における事故が増えます。実際に、転倒や転落の事故は多いです。しかし、見守りシステムを導入すれば、センサーで入居者の状況をモニタリングできます。
転倒や転落が起きた場合は、センサーが検知して通知してくれるため、素早い対応も可能です。また、問題が発生した原因を検証することもできます。このように、見守りシステムを導入することで、介護サービスの品質を向上させることができることが魅力となっています。

介護業務の効率化が図れる

センサーのデータ受信にIT端末(スマートフォン・タブレット)を使用すれば、連絡事項や対応状況など、一つの端末で行うことができます。従来の見守り機器では、認知症患者などに対する再々訪問で業務に追われる介護従事者が多かったです。
しかし、見守りシステムは入居者の状況をモニターで確認できるため、訪問回数を減らすことができます。このような無駄な業務を減らし、業務時間を短縮することで、少ない人員でも品質が高いサービスの提供が行えるようになります。

要介護者のデータを蓄積できる

カメラやマイクを搭載する機器と接続することで、入居者の情報量が格段に増えます。サーバー接続をすれば、対象者の情報を保存することも可能です。写真・映像もデータを蓄積していくことで、対応の幅が広がります。 介護事業所では、パーソナルケアも求められます。パーソナルケアを実施するためには、豊富なデータが必要ですが、見守りシステムで蓄積したデータが活かせます。将来的に、これらのデータは、医療との連携やAI診断でも役立つであろうと予測されているため、利用用途は拡大していくでしょう。

高齢者見守りシステムのデメリット

高齢者見守りシステムを導入すれば効果が得られますが、導入時の注意点もあるので気をつけましょう。ここでは、見守りシステムのデメリットをご紹介します。

初期投資が必要になる

高齢者見守りシステムを導入する場合は、設備投資が必要です。設備投資だけではなく、通信環境としてWi-Fi接続を前提とする見守りシステムが多く、Wi-Fiが接続されていない施設では新たに整備する必要があります。 また、スタッフ教育も必要です。ICT活用のための操作練習やマニュアル作成、勉強会の開催、運用ガイドラインの作成を行って、スタッフに共通認識を持たせなければいけません。スムーズに運用していくためには、連携・協働できるベンダーによるサポート体制を整える必要があります。

情報漏洩の恐れがある

介護IoTのセンサー技術を用いる見守りシステムを利用する場合は、セキュリティーリスクへの対策が求められます。サイバー攻撃による不正操作や情報漏洩のリスクもゼロではありません。
アプリケーション・プラットフォーム・ネットワーク・機器の各階層で確実にセキュリティ対策を実施し、多層防御の態勢を取ることが重要です。情報漏洩のリスクをなくすためにも、信頼できるベンダーに相談しましょう。

通信環境の障害が出る

介護IoTのセンサー技術は、各種の機器をセンサーでつなぐため、障害が出る場合もあります。主な障害として、インターネット回線の障害・ネットワーク機器の故障・設定の問題・プロパイダ側の障害があげられます。
無線通信でデータの送受信が行われますが、Wi-Fiは比較的短い距離の通信技術になるため障害が出やすいのです。
そのため、見守りシステムを導入する場合は、保守サポートの体制を持つベンダーに相談してみてください。

まとめ

今回は、高齢者見守りシステムをご紹介しました。少子高齢化の進展に伴い、要介護者も増加しています。介護人材の不足や介護職員の負担増で、介護のサービスの質の低下が問題視されています。
このような状況を改善する生活支援用具として、見守りシステムは登場しました。介護業務の効率化や介護サービスの品質の向上を目指す介護事業者の方は、ぜひ、見守りシステムの導入を検討してみてください。

【参考資料】

  1. SEED PLANNING「高齢者見守り・緊急通報サービスの市場動向」
  2. 日経XTEC「国が普及目指す「高齢者見守りセンサー」の凄さ
  3. 厚生労働省「第4章見守り支援機器(介護施設)」

芦原 花菜

ITを活用した業務効率化に興味を持ち、米国と中国(深圳)へ渡航。日本より優れているIT技術を目前にして、ビジネスに役立つIT情報を日本企業の経営者に届けたい想いが芽生えて、Webライター中心(マーケティング支援や業務効率化支援も行う)に活動。